アイドルの恋愛 - 渡辺美優紀事件の何が問題か

小林よしのり氏が渡辺美優紀事件を受けて恋愛禁止について何回にも分けて長々とコラムを書いていた。

「恋愛禁止条例」から「恋愛スルー条例」へ(最終回)
http://yoshinori-kobayashi.com/4606/


大の大人が何をやっているのかと端から見ると滑稽かもしれないが、ただアイドルファンをやっている以上、アイドルの恋愛について何が問題なのかじっくりと思索にふけるのも悪くないと思う。


アイドルの恋愛の何が悪いのか。
恋愛そのものは不倫など別の問題を含んでいなければ特に何か悪いわけではない。
ところがアイドルの場合は「ファンを裏切った」と言われる。「恋愛をしない(特定の相手を作らない)」という暗黙の合意を裏切ったということなのだろうが、そもそも「恋愛をしない」とファンと表立って取り決めたわけではない。
「恋愛禁止条例」や「片思いはOK、両思いはNG」などの過去の言動や曲や歌詞を盾に取る人もいるが、どれもジョークのようなものでしかない。いわゆる恋愛禁止の不文律も、やはり不文律でしかない。裏切るも何も元からそのような合意はなされていないと言われればそれまでだ。
裏切った・裏切ってないの観点では堂々巡りでそこから先へ話が進まない。


アイドルの恋愛沙汰ではっきりしているのは、一部のファン(主に異性のファンの多数)を惹き付けていた「魅力が失われる」という、基本的にはそれだけのことだ。
小林よしのり氏はこの「魅力が失われる」ことを「偶像」という言葉を使って表現をしているが。

メンバーはその魅力が失われるリスクを承知の上ならば自由に表立って恋愛すればいいし、魅力が失われるのを回避したいならアイドルである間は恋愛を控えればいい。
それに対してファン側は、恋愛によって魅力がある程度失われてもなお魅力を感じるならばファンであり続ければいいし、魅力を感じなくなったらファンをやめればいい。

たとえば、恋愛沙汰による魅力のマイナスが 70 とする。

元々の魅力値が100のメンバーAに恋愛沙汰があった場合、発覚後の魅力値は、
100 (元々の魅力) - 70 (恋愛沙汰による魅力のマイナス) = 30
となる。
Aのファンにとって
 魅力値が30でもまだ満足できるならファンを続けるだろう。
 魅力値が30で満足できないならファンを辞めるだろう。
 周りにもっと魅力の高いメンバーがいたらそちらに流れるだろう。

一方、元々の魅力値が50のメンバーBに恋愛沙汰があった場合、発覚後の魅力値は、
50 (元々の魅力) - 70 (恋愛沙汰による魅力のマイナス) = -20
となる。
Bのファンにとって
 Bはファンを辞めるだろう。むしろ憎悪の対象に変わるかもしれない。

同じ恋愛沙汰でも、メンバーそれぞれ元の魅力によって、ファンにとどまったことで実質的に恋愛を肯定することになったり、ファンを辞めたり乗り換えたりすることで実質的に恋愛を否定することになったり、ファンの受け止め方が変わってくる。
恋愛沙汰で事実上アイドル的に終わったメンバーがいる一方で、指原莉乃のようなメンバーもいるが、それは指原莉乃が恋愛沙汰によるマイナス分を圧倒するほどの魅力を持っているからだ。
要は恋愛沙汰による魅力のマイナスをカバーできるほどに魅力的であれば何の問題もないということ。


以上より、アイドルの恋愛で問題とすべきは、暗黙の合意を裏切ったからでもなく、不文律を破ったからでもない。
アイドルとしての魅力が失われる覚悟もなく、こそこそと恋愛していること
だろう。