AKB48グループの組閣と選抜総選挙と卒業システム

AKB48グループは新規メンバーを大量に加入させてその人的パワーで他アイドル等を突き放して現在の地位を維持してきた。
ただ、AKB48グループのこの手法には問題があった。それは、

  • アイドルを供給過剰状態にしてしまうこと
  • 限られた人以外は基本的に3,4年でアイドルとしての魅力が尽きてしまうが、その後の対処法がないこと

これはAKB48グループには「加入」の明確なシステムはあるが、「卒業」の明確なシステムがないためだ。なので規模の適正化のために何かしらの「卒業」システムが必要なのではないか、ということはこのブログでも何度か書いてきた。

AKB48グループは「加入」システムとして従来のグループ単位でのオーディションがあり、更に最近では、チーム単位で加入者を決定するドラフトイベント、チーム8方式といった新しい試みも行われている。

それに対して「卒業」についてはこれまでシステム的なものがなく、メンバーの自由意志に任せて辞めたいときに辞めることに(表向きは)なっている。

卒業をメンバーの自由意志に任せることは以下の問題がある。

  • 劇場公演や握手会など日々の活動だけでは、今後アイドルやタレント等でやっていけるかどうかをメンバー自身が判断するのはむずかしいため、卒業するかどうかの判断は、学業に専念する等のメンバー個人の事情によるものが多くなりがちで、本来はメインの判断基準となるべきアイドル(タレント)適性の有無があまり考慮されない。
  • 惰性で活動を続けて卒業の決断が後れてしまい、10代、20代の貴重な時間を無駄にすることになりかねない。または、つぶしのきかない状況になってしまいかねない。

では逆に雇用側から卒業を働きかけるのはどうか。
人数が多すぎるから、アイドルの供給過剰だから、そろそろアイドルとしては難しい年頃だから、思った以上に人気が伸びないから等、雇用側から直接卒業を持ちかけるのは、つまり「肩たたき」を行うということであり、メンバーだけでなくファン側にとっても感情面で望ましくないし、雇用側にとってもできることなら行いたくないのだろう。
「加入」システムに対して、これまで「卒業」システムが構築できなかったのはこのためでもある。


そこで、ベストとは言えないが次善の策としてなかなか有効な手法が、故意なのか偶然なのかわからないが編み出された。
それは「組閣」と「選抜総選挙」を行うことで、メンバーにアイドル(タレント)適性の有無や今後もこの世界でやっていけるかどうかの判断材料を与えるのと、決断の契機を作ってやるというもの。

「組閣」の最大の目的は言うまでもなく、メンバーの周辺環境を変えることで新たな刺激を生じさせて、メンバーそれぞれの成長を加速させること。
周辺環境が変わることでメンバーは改めて自分の位置づけ等の判断材料を得ることになる。まだ惰性で活動を続けていたメンバーにとっては現体制と新体制の区切りは卒業のよいタイミングになるだろう。

選抜総選挙」は順位という目に見える形でメンバー自身のアイドル(タレント)適性を判断する材料を与えるイベントであり、また選抜総選挙の「立候補制」は、今後もAKB48グループの一員として評価されるよう活動してゆくという宣言を行うようなものなので、やはり惰性で活動を続けていたメンバーにとっては卒業のよいタイミングになるだろう。


このようにこれらのイベントを行うことで、卒業の決断は以前と変わらずにメンバーの自由意志に任せるが、間接的に卒業をより促すスマートでベターな仕組みができあがった。
とはいえメンバーの自由意志に任せていることに変わりはないので、いずれは破綻することになる可能性が高いが、それまではこれらの仕組みでもって規模の適正化を図ってゆくことになるのだろう。